2010年11月23日
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感想・「劇場版3D あたしンち 情熱のちょ〜超能力母 大暴走!」

Written By: トーノZERO連絡先

 まず、あたしンちの映画は2本目で、1本目は正直あまり出来がいいとは言えませんでした。人格入れ替わりSF風の話があたしンちに似合っているとは思えませんでした。

 今回も、懲りずに超能力というSF風のネタを使ってまた勘違いした映画になっているのかと思いました。

 劇場での上映回数も減っているし、あまり人気は無さそうだ……と思い、まだ滑ったのかと思ってその滑り具合を見に行くことにしました。

 ところが、どっこい。とんでもない勘違い。凄くいい映画でしたよ。

前段階の話 §

 調べてみると上映している劇場がそもそも少ないことが分かりました。府中は上映している珍しい劇場でした。というわけで、出かける前に予約を入れようとすると、かなり座席が埋まっていることにびっくり。比較的小規模なスクリーンで、祭日で、会員は1300円で見られる火曜日(でも料金は最初から安いので割引は関係ない)ということを差し引いても予想以上の混雑ぶりです。

 しかも、ギフトムービーの鷹の爪団の「生肉」で笑いが起きます。夏頃から上映している英会話バージョンだから映画館に何回か来ていればここで笑うはずがありません。そもそも、映画館に行く習慣のない客層なのでしょう。

 では、そういう客層に座席が埋まる映画とは、どういうものか。つまり、良い評判が口コミであたしンちファンのファミリーの観客を動員しているということでしょう。おそらくね。

中身 §

「あたしンち」という作品は、たぶん「母」「情熱の赤いバラ」「あたしンち(帰る家)」の3題話です。家に帰ろう、帰る家が「あたしンち」です。そして家には母がいて、母とは「情熱の赤いバラ」を歌うわけです。だから、この作品は家に帰ると首がない怪物のような怪人がいて。それが母であるというのが基本。前映画は、その基本構造が崩れていましたが、実はこの映画はこの基本構造にあくまで忠実。見終わってこの映画を代表する3つの要素をあげるなら、文句なく「母」「情熱の赤いバラ」「あたしンち(帰る家)」の3つです。

登場人物はほぼ完全にタチバナ家の4人だけ。とても整理されていて、分かりやすくなっています。他の登場人物はほとんどワンシーンのみ。だから、安心して母の奇行を鑑賞できます。みかんが母の奇行を際立たせ、ユズヒコが突っ込んで、父が締めるという黄金パターンが上手くはまっています。最終的に、一家はマンションを救うことになりますが、あくまでマンションです。世界ではありません。我が家よりはスケールが大きいが、隣町にすら行きません。そこもいいところですね。父が台車を押して母がそれに乗ってマンションを救うのもいい描写です。最後に出てくる巨大バラもいい描写です。マンションを崩壊させたのも母自身というのもいいですね。

では、超能力とは何かというと、実はほとんど意味がありません。ある意味で、物語の推進力(ドライビングフォース)としてそこにあるだけで、テーマ性はありません。要するに、善行にはまって家族に迷惑を掛ける母だが、家族の理解と強力が得られました、という話です。超能力である必要はドラマ的にはありません。単に3D映画としての見せ場を作るために選ばれているに過ぎません。だから、自分たち家族のことのように映画を見て泣けるわけですね。

 というわけで、まとめとしては超大当たりですよ。クリスマスの夜(ちょっと早いが)には奇跡が起こるという体験でした。どんな映画も見るまでは分かりません。これもまた、知る人ぞ知る傑作の1本となるのかも。

オマケ §

これはタチバナ家版「クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ 3分ポッキリ大進撃」かもしれません。超能力というのは、怪獣シリマルダシに相当するわけですね。